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最高裁判所第一小法廷 昭和33年(オ)214号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人弁護士小脇芳一、同古田進の上告理由について。

原判決は、先ず「原判決(第一審判決)末尾添附目録記載の山林三筆(以下本件山林と称する)が、控訴人(被上告人)の所有名義に登記せられていることは、当事者間に争がない。従つて、一応右山林は控訴人の所有に属するものと推定される旨」判示している。されば、原判決は、所論第四点のいうように、結局物権変動並びにその原因となつた債権行為が有効に存在することを推定したものでないこと明白である。それ故、論旨第四点は、原判決の判示に副わない法令違背を主張するに帰し、採るを得ない。

次に、原判決が右の争なき事実から前記控訴人の所有を推定したことの正当であることはいうまでもないところであるから、上告人(被控訴人)らの本訴請求を理由あらしめるには、上告人らにおいて、自己の主張事実を立証して右推定を覆す責任を負担することこれまた論を俟たない。しかるに、原判決の判示によれば、被控訴人らは、本件山林を含む約二十町歩の山林は、被控訴人らの先代亡重歳幸太郎が昭和二二年七月二八日訴外野上雄吉から買受けて所有していたものであるが、その不知の間にほしいままに本件三筆の山林が控訴人名義に登記されているものであると主張するけれども、被控訴人の全立証によるも未だ右主張を肯認することができないのみならず、却つて挙示の証拠を綜合すれば「原判示事実」を認定することができる。故に、被控訴人らの全立証によつては前記控訴人の所有に属するとの推定を覆すことはできないというのであつて、その判示は、原審の証拠関係に照しこれを是認することができるのであり、前示認定の過程に所論第一点ないし第三点、および、第五点のかきんを見出し得ない。それ故右所論は採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)

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